春天に想ふ
春の天皇賞。昔はダービーと並ぶ最高峰のレースやった。
親父は「競馬やるならダービーと天皇賞だけは獲らなアカン」
ドヤ顔で言うとった。
確かに、天皇賞は得意だったような…
(ダービーはいつも外してたような…笑)
モンテファストが勝った時、親父は仲間や親戚を集めて大宴会を催して大騒ぎしとった。
エリモジョージん時以来の大儲けやと叔父が
もうえらい興奮してな。
その二週間前の皐月賞。
大勝負を賭けたビゼンニシキがシンボリルドルフに完敗を喫してな、
ラジオの解説者が「ルドルフ以外の単勝を買う人の気がしれん」と、自慢気に言うとんの聴いた時の親父の悔しそうな怒り顔は 鮮明に覚えとる。
いつも遅くまで飲み歩いていた親父が毎日早く帰ってくるので、子供ながら、お小遣い使い果たしたんやなって分かったわ(笑)
そんなこんなで迎えた天皇賞。
某解説者の本命はホリスキー。1番人気や。
親父はテレビを観つつラジオ聴きながら、「あれ(ホリスキー)は弱い相手にしか走らん。今日は吉永や。ミスターシービーが出られんとなって、吉永はモンテファストに賭けとる。混戦やったら一番根性のあるコンビで決まりや!」
みたいなこと言うとって、
実際、ホンマに激しい消耗戦のようなレース展開やった。
最後の直線、外からモンテファストが差して来た時はそらもう「差せー!差せー!」って大声でな。
しかも、さらに大外からホリスキーが鬼脚で追い込んで来たら、「やめーぃ!来るなー!」
どっちやねん!(笑)
結局、親父が賭けたモンテファストが勝って、伏兵のミサキネバーがホリスキーの猛追をハナ差凌いで2着。
レース回顧で解説者が、位置どりの差だとか追い出しが遅れたとか、そんなような事を言うとって、
親父が「ちゃうわ、ホリスキーは最高の競馬して負けたんや。コイツ阿保や。」って、
めっちゃ嬉しそうに笑っとったわ。
あの頃の天皇賞は馬場も悪くて、芝なのに砂煙が濛々と舞う中で、人馬共に命懸けのメイチ勝負しとったんや。
その昔、天皇賞に勝った馬は名誉の引退だったとか。
次を見据えない戦いやからこそ、真の王者を決めるに相応しいレースだったんやね。
時代は変わり…
クッションの効いた路盤の上に、きめ細かく綺麗に生え揃った芝が敷き詰められ…
同じ3200mなのに、スピードが求められるレースに様変わり。
勝ち時計は大幅に短縮されてきたけど、
昔の馬が弱かったワケじゃない。
そう思うからこそ、
このレースは、一番根性のあるコンビが勝つんや!
そう言って笑いたい。
親父なら多分…
今年は
ユーキャンスマイルやろな。